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THY Taiwan International Law Offices

台日国際相続Cross-borer succession

一、適用される法律は?(準拠法)

 国際相続において最も基本的かつ重要なのが、「どの国の法律に基づいて相続手続きを進めるか」という準拠法の問題です。これは、誰が相続人になるのか、各相続人の相続分(取り分)はどうなるのか、といった相続の根幹に関わるルールを決定します。中華民国(台湾、以下同様)と日本の法律は、原則として被相続人が死亡した時の本国法によると定めています。つまり、適用される法律は、被相続人が死亡時にどの国の国籍であったかによって、適用される相続法が決まります。
  • 例1: 亡くなった方が台湾籍の方であれば、たとえ日本に長年住んでいたとしても、相続人の範囲や法定相続分は中華民国の民法に基づいて決定されます。
  • 例2: 亡くなった方が日本籍の方であれば、たとえ台湾に長年住んでいたとしても、相続人の範囲や法定相続分は日本の民法に基づいて決定されます。
  • 例3:二重国籍の方は、その最も密接な関係がある地の法に基づいて決定されます。


※注意点:準拠法 vs. 遺産所在地法

 中華民国(台湾)法においては、相続人の資格や相続分等は被相続人の本国法に基づいて判断されますが、不動産等に関する相続登記や処分方法については、原則として不動産の所在地の法律に従う必要があります。例えば、相続の準拠法が日本法であっても、台湾にある不動産の相続登記を行う際には、台湾の土地法や関連法規に従う必要があります。

  • 表:準拠法と遺産所在地法の対照

被相続人 の国籍

遺産の所在地

相続関係の準拠法(被相続人死亡時点の国籍による)

遺産に係る処分の根拠法(遺産の所在地)

台湾籍 台湾 中華民国法 中華民国法
日本 中華民国法 日本法
日本籍
台湾 日本法 中華民国法
日本 日本法 日本法
日本へ帰化した方 台湾+日本
日本法
(死亡時は日本籍)
遺産の所在地による
- 台湾の遺産:台湾法
- 日本の遺産:日本法

 

二、相続人は誰か?(相続人の特定)

 相続手続きを進める上で、誰が法的な相続人となるのかを確定させる必要があります。台湾も日本と同様に戸籍制度があるため、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本(除籍謄本、原戸籍謄本を含む)を取得することで、相続人を特定することができます。

  • 表:台湾の戸籍謄本の種類と対応する日本の戸籍の種類
    項目 台湾  日本の戸籍の種類(参考用)





    現戸全戸戸籍謄本
    申請時点における当該住所の世帯の現住構成員(及び非現住者※)の情報が記載されている。
    ※「非現住者」とは、その世帯に過去に属していた構成員のうち、「国外への転出」「死亡」「死亡宣告」「戸籍の廃止」のいずれかに該当する者を指す。
    戸籍謄本/戸籍全部事項証明書
    当該「戸籍」が編成されてから現在までの全員の情報が記載されている。
    現戸部分戸籍謄本
    戸籍内の構成員のうち、指定した構成員の情報のみ表示される。
    戸籍抄本/戸籍個人事項証明書
    戸籍内の構成員のうち、指定した構成員の情報のみ表示される。
    記載内容
    「記事欄」は「詳細記事」又は「省略記事」を選択可能。「詳細記事」は、住所変更、出生、死亡、結婚、離婚、養子縁組等の内容を含む。
    記載内容
    氏名、出生年月日、父母の氏名、続柄、配偶者、子女、本籍地、出生、死亡、結婚、離婚、養子縁組等の事項



    除籍謄本
    戸籍の筆頭者の変更前の戸籍謄本、又はその他の事由により戸籍の情報が書き換えられた戸籍謄本
    除籍謄本
    その戸籍に記載されていた全員が、死亡、結婚、転出等の理由により「全員除籍」され、その結果、当該戸籍自体が閉鎖され、現行の戸籍ではなくなったもの。
    ※実務上では、日本の銀行等で相続手続きの際に求められる除籍謄本は、「亡くなられた方の除籍が記載された戸籍謄本」を指していることが多い。


    /
    改製
    前謄本
    手書きの戸籍謄本
    民国86年(西暦1997年)9月30日に全国電子化が実施される「以前」の「手書き」様式の戸籍謄本情報
    改製原戸籍謄本
    法改正や電子化が行われる前の旧様式の戸籍謄本を指す(例:平成改製原戸籍、昭和改製原戸籍)。
    電子化時期
    全国統一で民国86年(西暦1997年)9月30日にオンライン接続作業が完了。
    電子化時期
    各市区町村ごとに異なり、法改正(平成年間等)に伴って行われることが多い。それ以前の記録は改製原戸籍となる。

 

  • 台湾の戸籍謄本取得申請に留意すべき事項
  1. 各銀行や行政によって求められる種類が異なることがあるため、必要とする戸籍の種類をあらかじめ明確にすることが不可欠です。
  2. 「全戸戸籍謄本」は枚数が多くなる場合があり、ページ数の多さなどを理由に、関連するすべての記録をスムーズに取得できないことがあります。
  3. 個人情報保護の観点から、利害関係を証明する書類(銀行の相続書類や続柄の証明等)の提出を求められる場合があります。
  4. 古い手書きの戸籍は、毀損やデータ化の誤り等で取得が困難な場合があり、状況により、その古い手書き謄本が保管されている元の戸籍のある戸政事務所まで出向いて調査が必要になることがあります。
  5. 台湾で取得した戸籍謄本を日本で使用する場合は、一般的に日本語への翻訳及び関連する認証手続きが必要になります。

 

三、台湾における相続の主な手続き




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